中山 忠親
霊魂のしたたり
このたび親しき知人である安積義尊氏が人権と差別に関する本を出版されるとのこと、人権や同和問題の良き理解者であり、宗教家でかつ実践家であるだけに、誠に当を得た思いで、早速一文を私見として述べてみます。
顧みますれば、日本民族は、単一民族のように思われ、またいわれて来ましたが、決してそうではなく、天孫族・出雲族・先住原民族と渡来民族である漢族・秦族・高句麗・百済・任那や南方系諸民族等々の和合によって出来た民族であります。
記録によれば、応神天皇の頃より、諸々の渡来民族を皇道の法によって大和民族として組み入れられたのでありますが、現在、皇道と申しますと、一般的には、かつて覇道による権力者が本意に反し、これを逆用したため、非常に誤解されているのであります。
皇道とは、天地自然の摂理を基にした人間が、人間として自然(真理による)に生きる秩序への道でありますが、この事をよく理解して欲しいと思います。
諸民族が皇道によって和合したのですが、後に覇道・覇権者によって、人為的・政策的に差別が作られたのです。
これは、その方が覇権者にとって非常に都合が良かったのであります。
そのことにより、覇権者によって作られた人権人法であるが、これを是正、人権差別を真実になくすには、天理・地理、即ち天地自然の摂理によるものでなければ解決できないと思います。
いいかえれば、この宇宙に存在する銀河系の一恒星が太陽であり、その一遊星が地球であり、この地球に点在する一小生物が人間でありますが、太陽・地球といえども、天理即ち宇宙摂理によって存在している霊の物体であり、人間も宇宙摂理、太陽及び地球摂理によって存在するものであります。
したがって人の理、人の法は、すべてその摂理によらなければならないのですが、人間とくに権力者によって作られる法の場合は、宇宙及び地球摂理即ち自然の摂理、また人理に反する事を平然と定めますが、その事が現在の人権差別の大きな原因だと思います。
かつて皇道によって渡来諸民族が日本人=大和民族として種々の犠牲や苦労があったとしても和合同化出来たのに、何故、現在、それが出来ないのかといえば、それは現在の法律や憲法の条文や人権的にも何ら差別がないにも拘らず、現実には、居住、教育、就職、結婚などの諸問題が提起されるのである。
これは偏見を持った、また持っている人間がこれを逆用したり人為的都合により最大公約数的にまとめた法だけに、この事だけでは解決出来ない。
本質は、心の問題である。
それは、過去の歴史的諸問題の反省により、法的によって物質的にどれだけ物を与えられたとしても、ただ物質的に豊かになったとしても、心、「人間と人間の心のつながり」がとぼしかったとしたならば、問題解決は出来ないのであります。
人間は天地自然の摂理による元素である霊が魂(心)と身体(形)によって出来ておりますが、幾ら形があったとしても心がなければ人間として欠けているのであります。
これが、これからの問題なのであります。
考えてみますれば、人権、同和問題は、数千年の昔から形は変わっているとしても、潜在的に非人道的に繰り返されて来た問題であり、その時代時代の法律や政策ではかたづかないのであります。
要は、同和しようとする人の自覚と、これを受け入れ、同和する人の「同胞一和」の精神即ち心からの理解と協調と努力がこれからも繰り返し、繰り返されることがより必要であり、大事なことだと思うのであります。
この事は、人間が霊文明を放棄し、物質文明に走った事に、また覇権者による私欲などによる結果によって生じた事であります。
もう一度、人間が人間として歴史や文化、その他事物一切の事を振り返り良く考えて、天地自然の摂理に合理する生き方を模索し、同じ生命を亨けた人間として生きて行くべきであり、霊理によって生じた人間同志がさしたる理由もなく差別し、各人権を犯すということは、人間として非常に恥ずかしいことであり、また摂理に反することではないかと思うのであります。
昭和59年12月1日
光格天皇胤裔
明治天皇外戚
中山宗家二十八代
貴嶺会總裁
中山 忠親